「じゃあな、また集まろうぜ!」

「あんたはこれから勉強漬け!落ちたら承知しないからね!」

別れ際までそんなコントのようなやりとりをする山下と昂と別れて、薄暗い夜道を実結と二人歩く。

誰もいない、しんとした道。

無言で歩いていると、急に実結が立ち止まって、俺の服の裾を引っ張った。

「そ、颯…あのっ、手、繋ぎたい…」

恥ずかしいのかうつむいたまま、小さな声で言った。

なんかこっちまで恥ずかしくなってくる。

「ん…」

実結の手袋越しの手を握ると、待ってと言い、手袋を外す。

そんな一つ一つの行動が可愛く思えて仕方ない。

年明け早々おかしいよな。

「ありがと…」

いつか、いつの日か当たり前のように手をつなぐことができるようになる日が来るのか。

少しずつだけど、俺達は前に進めてる?

二年と少し前、思いを伝えて、幼なじみじゃなくなって。

ずっと隣にいたのに全然気が付かなかった実結の一面にいつも心臓を痛くした。

初めて手を繋いだのは、転んだ実結を起こした時。

前触れなんてなかった。

それからたくさんの初めての経験をした。

こんなにも好きだって思えたのも、実結が初めて。

これから、ずっと隣にいたいって思えるのも、実結。

全部、実結なんだ。