俺は占いとか運勢とかあまり信じる質ではないけど、実結は結構信じるタイプだ。

朝だって

「今日の颯のラッキーカラーは水色だよ!」

とか

「ああっ!今黒猫が横切った!きっと悪いことが起こる!」

とかよく言ってたしな。

俺は実結の手の中からおみくじを奪って、そばにあった木の高めのところに結びつける。

「こうやっとけば大丈夫だから。」

そう言うとやっと笑顔を戻した。

「ありがとね、颯!」

そんなやりとりを見ていた山下が急に大きな声を出した。

「デジャヴだわ!」

デジャヴ?

実結を見ても本人もわかっていない様子。

「あー!修学旅行の時のあれな!」

修学旅行?

まだわかっていない俺達に山下がため息をつく。

「ほら、中三のときの修学旅行で清水寺でも四人でおみくじ引いたでしょ、あの時と同じだなって思って。」

中三のときの修学旅行、清水寺…

思い出した。

確かあの時も実結だけおみくじの結果が良くなくて、でさらにその年は受験生だったから余計に落ち込んでた実結。

その時も笑って欲しくて、笑顔にしたくて、考えた結果、木に結んであげることを思いついた。

あの時から変わらないのは実結には笑ってて欲しいって思うこと。

好きだったのに言い出せなくて、でもそばにいたくて、その行動があの頃の俺の精一杯だった。

「ほんとだね、颯、あの時からありがとう!」