「二人ともー!なにやってんの、早く早く!」

いつの間にか神社はすぐそこ。

いつもは人気のない近所の神社なのに、今日は祭りの日並みに賑わっていて、屋台まで出ている。

「とりあえず、お参りしよっか!」

今度は山下と昂が先に歩き出した。

小さな実結は人ごみに埋もれそう。

「おい、大丈夫?」

「平気!迷子になったら携帯あるし…」

そういう問題じゃない。

山下と昂は前の列に並んでいる。

見られない、よな…

「そっ、颯!?」

びっくりしたように俺を見上げる実結。

なぜなら俺が急にその手を握ったから。

「人が居るよ?」

「迷子になられたら困るから。」

本当はそれだけじゃない。

つなぎたかったから。

だけどそんなこと、言えない。

「ふふっ、今年最後のハッピーだ。」

実結はそう言ってわらった。

ゴーン、鐘が鳴り出し、周囲からおめでとう!という声が上がる。

どうやら年が明けたらしい。

「颯!颯!」

実結が何か言っているけど、周りが騒がしくて聞こえない。

「なに?」

耳を寄せると、思った以上に顔を近づけてしまって、鼻先が触れそうになった。

慌てて離れる。

こんな人混みの中で、ありえない。

実結を見ると顔が真っ赤だった。

またなにかゴニョゴニョ言ってうつむいた。