もう!

あたしの妄想癖には困ったもんだよ。

穴があったら入りたいとはまさにこのことだ!

「結婚できんだろ、別に。」

えっ!?

意外な答えが返ってきてびっくりしちゃった。

だって絶対バカにされると思ったもん。

「まあ、藤咲家から二人とも娘を嫁にもらうのは廉さんをかなり説得しないと無理っぽいかな。」

それってもしかして、あたしとの結婚をちょっとは考えてくれてるの??

だとしたら、嬉しすぎる!

だってこんなこと考えるのは自分だけだって思ってたもん。

「なににやけてんの、ほら、行くよ。」

なんだか数時間前の甘さが嘘みたいだなぁ。

あのとき、聖君が呼びに来なかったら颯と、き、キスしてたんだよね。

意識し始めると、颯の形の良い唇にばかり目がいっちゃうあたしは可笑しいのかな。

もっと触れたいって思うのはいけないことなのかな。

「颯…手、繋ぎたい。」

気がつけばそんなことを呟いていて。

ここはマンションのエントランス。

誰かに見られるかもしれないのに。

「ん、」

優しく包み込まれるあたしの手。

手袋越しだけど、颯の手の暖かさが伝わってくる。