こんな真剣な顔の都築君ははじめてみたかもしれない。

それにいつもは他人のことなんて、ましてや恋愛ごとになんて関わったりしないのに。

「都築く…!?」

視界が急に暗くなって、なにも見えなくなった。

それが都築君に抱きしめられているからってことに気がつくのにしばらく時間がかかった。

「…っ!?」

なんで…っ!?

どうしたの!?

一人でパニックに陥る。

だってあの、無愛想で無関心な都築君が!?

「…頼むから、後悔するようなことになんないで。」

頭上から聞こえてきた都築君の声は少し震えていた。

「前にいったよね、幼なじみがいたって。」

幼なじみ?

あっ、そういえばそんなことを聞いたこともあったような…

「同い年で、物心ついたときからの幼なじみだったんだ。里桜っていうの。ちっちゃくて、世話焼きで、ドジで。」

「ずっとそばにいたんだ。小さい頃からずっと。俺は里桜が隣にいることなんて当たり前のことだと思ってた。当たり前のことになってた。だから告白なんていつだって出来るって思ってた。」

そこで一呼吸おいて、都築君は言った。

「けど、俺は里桜に言えなかった。」

どうして、何て言えなかった。