汚ない手で実結に触ってんじゃねえよ。

何泣かせてんだよ…

傷つけたくない。

何よりも一番大切なんだ。

嫌われたって、幼なじみじゃいられなくなっても大切。

それからはあまり記憶がない。

気がつけば地面に倒れていて、まだまだ鍛えないとな、なんてのんきな考えも浮かぶほど。

体はボロボロなのに実結の体温が伝わるとなんだかとても安心できた。

改めて感じた。

俺はこいつが好きだ。

手離したくない、そばにいてほしい。

そう思った。

「颯…ありがとう…」

ぼんやりとかすむ視界の中で実結がやっと見せた笑顔に安心したのかそこから覚えていない。



次に目をあけると白い天井が見えた。

「颯!起きたの?」

母さんの心配そうな顔が見えた。

少し目も赤い。

家族にまで迷惑をかけて、心配させてしまった。

「もう、びっくりしちゃったわ、聖ならともかく、颯が喧嘩なんて言うから。」

無理矢理笑って医師を呼んでくるといい、部屋を出ていった。

すぐに戻ってきた母さんと医師に簡単な診察を受ける。

体に幸い異常はなく、大きな怪我もなかった。

「今回は向こうに非があったって認めたそうだから推薦は大丈夫だって。」

その言葉に少しの安心感を覚える自分にムカついた。