「藤咲っ!」

「実結っ!」

グラウンドの真ん中へんであいつの名前を呼ぶ声がたくさん聞こえた。

見てみると人だかりができている。

「早く保健室に…って颯?」

昂の言葉を聞き終える前に、俺の足は勝手に駆け出していた。

ざわついた人だかりを掻き分けながらなかに入ると、実結がぐったりと地面に横たわっているのが見えた。

思わず名前を呼びそうになって慌てて口をつぐむ。

「よし、俺が運ぶ!」

「は?俺が運ぶし!保健委員だからな!」

男たちが誰が実結を運ぶかで争っている。

実結と俺がまだ付き合っているのなら真っ先に実結のところに行っただろう。

だけど今は違う。

もう彼氏でもなんでもないのに、他のやつに触れさせたくない。

「颯、行けよ。」

昂が俺の背中を押した。

もう関わらないって決めたのに。

俺の決意は弱すぎる。

「…このこと、絶対実結に言うなよ。」

そう念押しすると、倒れている実結の体を抱き上げた。

「あっ、颯!ずりーぞ!」

「えっ!?あの二人ってただのおさななじみなんじゃないの?」

周りのうるさい声を無視して、保健室までの道を歩く。

軽いな…まえにおぶったときよりさらに軽くなってる気がする。

ちゃんと食べてないんじゃねえの?

俺のせいで?

それにしても軽すぎる。

あんなに食べるの好きだったのに。

もとから痩せてんのにそれ以上痩せたら…