君のとなりで

颯には才能があって、だけどただの才能じゃなくて影での努力の積み重ねによる才能なんだ。

誰よりも頑張ってきたのをあたしは一番近くで見てきたの。

「…うん、すげえ楽しみ。けど、不安もある。」

目を伏せる颯はなんだか悲しそうに見えた。

「あたしが颯のファン第一号になる！颯が皆から嫌われても、あたしが日本で応援してるからね！」

「皆から嫌われてもって…何気ひどいな。…まあ、でもありがと。」

いつもみたいに髪の毛をグシャグシャにされるのかと思ったのに、颯は立ち上がった。

「そろそろ行くか。展望台歩いて10分ぐらいかかるらしいし。」

部屋の時計を見るといつのまにか十時半を指していた。

こういうときに限って時間は残酷なくらい早く過ぎていく。

外に出ると浴衣の隙間からひんやりとした風が入ってきて少し肌寒いくらい。

だけどさすが。

「颯、見て！」

「すげえ…」