「へへ…なんか颯が素直。照れるね…」

その笑顔で俺はいつも幸せな気持ちになってきたのに、今日は苦しい。

このあと自分のせいでその笑顔を壊してしまう。そう思うと、胸が苦しくて仕方ない。

エレベーターで屋上に上がり、扉を開けると星もまばらに出てきていて、さっきよりも空の色が濃くなっていた。

俺と実結は屋上にある小さなベンチに腰を下ろす。

「楽しみだね!今年はどんなのがあるかなー!」

無邪気に空を見上げて笑う実結。

そしていよいよ、花火のはじまりを知らせるアナウンスが聞こえた。

「ねぇ、颯。…あのね、花火の間、手、繋いでもいい?」

実結がすがるような目を向ける。

「…いいよ。」

俺は最後だと思いながら、その小さな手を握りしめた。

あたたかくて柔らかい実結の手はなんだか触れていると安心する。

小さな頃からいつもそばにいて、一緒にいることなんて当たり前になっていた。

手を強く握ると、こたえるように実結も握り返してくる。

ドンッと大きな地鳴りがして、空に大輪の花が咲き誇った。

わあっと歓声を上げる実結の横顔を見つめていた。

昔からそうだ。

俺は花火を見るふりをしていつも実結を見ていたんだ。