いつのまにか眠ってしまい、目が覚めると5時半をまわっていた。

エアコンもつけていなかった室内はじっとりと暑く、夕方だというのに窓の外からは蝉のけたたましい鳴き声がしていた。

背中には汗をかいていたのでシャワーを浴びるため風呂場へ向かう。

キッチンからは物音がするので母さんは帰ってきてるようだ。

風呂場に入る前に冷たいものでも飲もう。

「あら、颯。今日は花火大会に行くの?…ってどうしたの?」

包丁で野菜を切っていた母さんがその手を止めて、俺の顔をまじまじと見つめる。

「泣いてるの?」

…泣いてる?

頬に触れてみると、確かに雫が通った後
があった。

とことん情けなくて弱いな。

それ以上聞かれたくなくて何も飲まずに風呂場へ飛び込んだ。

シャワーで頬を、涙のあとが消えるようにこする。

なんで泣いてんだよ…

高校三年にもなって…

だっせ…

熱いシャワーを浴びると少し頭がさえた。