「颯の手、温かいね。」

「お前の手冷たい。」

強くぎゅっと握りしめる。俺の体温が実結の冷たかった手を温めていく。寒いのに、繋がった手だけは温かい。

「寒かったもん!あっ!ココア買おっと!マンションの下の自販に確かあったよね?」

ココアが相当楽しみなのか俺の繋いだ手を前後に振り、鼻歌を歌う実結。こいつのこういうとこほんとに子供みたいだ。

待たせたのは俺だし、奢ってやるか…

「俺が買ってやるよ。てか俺も飲む。」

そう言うと実結は目を丸くした。なんだよ、そんなにおかしいか?

「颯、ココアとか甘いの嫌いじゃなかったっけ?」

確かに甘いものは苦手だけどあのマンションの下の自販のココアだけは実結があんまり美味しそうに飲むからためしに一口もらって美味しく感じたんだ。

「あれは好き。」

「美味しいもんね!あたしも好き!」

一緒だね、と実結は何がそんなに嬉しいのかまた鼻歌をうたいだした。