地味で平々凡々なあたしは勉強も運動も特に得意ではない。

そんなただの幼なじみの肩書きで颯のそばに物心ついたときから一緒にいた。

昔から颯はあたしより一歩上手で、意地悪で無愛想。

だけど、本当はすごく優しいんだ。

小さい頃から意地悪だけど、それ以上にいつだってあたしを助けてくれた。

あたしが颯を好きになるのは必然的だったのかもしれない。

それに気づいたのは中学二年生の頃。幼なじみの好きから一人の男の子としての好きに変わった。

それからは何の気なしに頼まれるまま、協力していた颯への告白やバレンタインのチョコの伝達係が苦痛で、颯を好きっていう女の子がいたらモヤモヤして。

だけど、告白して幼なじみの関係が壊れるのが怖かったからなかなか行動にうつせずにいた。

そんな風に今までどおりに幼なじみとしてやってきたびびりのあたしに奇跡が舞い降りたのは、忘れもしない高校一年生の11月22日。

その日はテスト前でわからないところがたくさんあって、あたしは颯の部屋に質問しに行っていた。

いつものように「バカ」だとか「アホ」だとか言われつつ、苦手な数学に苦戦していると、急に颯がシャーペンを置いた。

「どうしたの?」

「実結、今好きなやつとかいるの?」

びっくりした。

だって颯の口からそんなこと聞くのは初めてだったから。