隣と真正面では距離が違う。

茜が珍しく真剣そうな顔で俺を見つめる。

「颯…そんなに実結が好き?」

「え?」

茜の口から出たのは思いもよらなかった言葉。

「あたし、颯が好きだよ。ずっとずっと颯が好き。」

そう言って俺の肩に顔を埋める。

茜のこと、そういう風に見たことがなかった。

だから今、そんなこと突然言われて、ものすごく動揺している自分がいる。

だけど、わかるのは俺は実結じゃなきゃだめだってこと。

他のやつが目に入らないくらい、実結が好きだってこと。

「ごめん、俺、バカみたいだけど実結が好きなんだ。」

「実結の、どこがそんなに好きなの?颯なら選び放題なのに…なんで実結なの?」

なんで実結なのか?そんなこと考えたこともなかった。

気がついたら実結を好きになっていて、実結以外に考えられなくなっていた。

実結のどこが好きかなんて、そんなの答えられない。

俺は実結の、泣き虫なとこ、意地っ張りなとこ、誰よりも優しいとこ、純粋で嘘がつけないとこ、バカなとこ、上げたら数えきれない、本当に好きなんだ。


良いところも悪いところも全部ひっくるめて、実結が好き。

「わかんねえ。でも…すげえ好きなんだ。あいつのこと。」

こんな恥ずかしいこと、他人に言ったのは茜が初めてだ。

「そっかー…そんなに颯に思われてる実結があたしは羨ましいよ…昔からずっと颯は実結ばっかり見てたもんね。」