「颯もさ、もうちょっと実結に好きだって気持ち伝えねえと葵兄ちゃんに実結をとられちゃうかもよ?」

なんなんだよ、なんでこんなガキに恋愛のアドバイスもらってんだよ、俺は!

「うるせえよ、ほっとけ!」

内心空の言葉を気にしつつ、エレベーターの中に空を押し込んだ。

俺は勝手だ。葵との約束をやぶってまで付き合った実結に好きだって素直に言えない。

言いたいのに、言えないんだ。理由は俺がヘタレだから。

心のなかではこんなに簡単に、素直に好きだって思えるのに。実結のことすげえ大切で、守りたくて、好きなのに。

大切だからこそ、好きだからこそ言えないのかもしれない。

やっぱり俺はそうとう情けない。