「ごめんなさい…っ」

あたしは颯が好きなんだ。颯の不器用な優しさ、温かさを知ってるから。

颯じゃなきゃだめなんだ、多分。

「わかってるよ、中原が好きなんだろ?だったら自分の気持ち、ちゃんと言えよ。」

疾風君があたしを離し、髪の毛を優しく撫でながら言う。

「実結が笑ってないと調子狂うしさ、それに俺もそうとう勇気だしたんだから、実結も行け!お前なら大丈夫だから。」

どうして、こんなに優しいの?こんなにだめなあたしを好きだって言ってくれた。

「うん、ありがとう!あたし、行くね!」

あっ、そうだっ!

「あの、チョコ、美味しくないかもだけど…」

約束してたから作ってきたけど…

「サンキュな!よし!頑張れ!」

あたしは疾風君の言葉を胸に歩きだした。すでに授業は終わってるみたいで、部活にいくひともちらほら。

頑張るとはいったけど、どうやって渡そうかな…ん?そういえば颯のチョコは?

ないっ!落としたのかな?どうしよう!

ポケットをまさぐるけど、もちろん手は空をきる。

最悪…でも確か、家の冷蔵庫にまだあるはず!今から取りに帰って、颯が部活から帰ってきたら渡そう!そのほうがゆっくりわたせそうだし。

そう決めたあたしは学校を出るべく、門へむかって走り出した。