「つ………」

私は気づけばその場から走りだしていた

「あ、春っ!!」

瑠奈と杏奈が私を呼ぶ声が聞こえた。心配そうな声色に申し訳ない気持ちもあったけど、私は走りだした。

「春っ!まてよ!」

智樹が後ろから追いかけてきてる。

ヤバイ、足がもつれる。。。こけそうになりながらも私はなんとか足を動かす

賑わう廊下をぬって走りぬけ、気付いたら行き止まりだった

生徒のいない、出し物の教室から離れてしまった場所だった

「はぁっはぁっっ……」

空気がいっきに喉を通りぬける、口内に鉄の味が広がった

「春…」

呼ばれた名前にビクッと身体がはねる

そしてゆっくり振り返った

「智樹…」

「久しぶりだな」

私が名前を呼ぶと智樹は弱々しく笑った

「うん、そだね…」

声がかすれる

「じゃっ!」

「おい春っ!」

「離してっ!!

その場から立ち去ろうとしたのに智樹に腕を掴まれてしまった

離してほしくて腕を振り払おうとしたけどびくともしなくて、私の目は潤みはじめた

「聞け!俺、謝りたいんだ!春…ごめんっ!春のコトいっぱい傷つけた。悪かったと思ってる、、春がいなくなってから本当に後悔したんだ。。俺がバカだった、許してくれ」

「私、、智樹のコト好きだったよ?ううん、今でも好き」

それまで曇ってた智樹の顔が一瞬明るくなった

私は智樹に掴まれたまんまの腕におかれた手を静かにどけた。

「私が好きなのは中3の時の智樹なの!暴力ふるうような智樹なんて私知らない!!」

そう叫んでこんどこそ走りだした

「大時計のとこっ!!!」

廊下に智樹の声が響き渡って、無意識に足がとまった

「俺、それでも待ってるから!!一緒に踊ろう…」

これ以上、智樹のそばにいたくなくて私はその場を去った

だってあの日私に暴力をふるった智樹はどこにもいなくて、、、

嫌いな理由はなんもなくて、、、

頬を伝った涙はあの日と同じように塩辛かった