マネキン少年


鍵を開けて部屋に入るのにも、暗い部屋にも、おかえりの声がないのにももう慣れた。
でもちょっと、この狭い部屋に来てくれる誰かが、電話をくれる誰かがいればいいのにななんて思う。


バッグとショッパーをベッドの隣に投げてお風呂の準備でもするかなって髪をまとめたところでピンポーンってチャイムが鳴った。もうすぐ九時になるっていうのに誰だろう。
一人暮らしってこういう時ぞくって怖くなっちゃったりするのが嫌。
モニターホンのついた部屋にしてよかったなあって思うのはこういう時かな。


「はい。」

「どーもー。原沢菜々香さんに宅配便です。」

「あ、今でまーす。」


今はやりの、宅配男子っていうのかな。相田さんに負けず劣らずの爽やか笑顔。
判子なんて全然使わないからどこにしまったか忘れちゃった。
適当なボールペンをさっと取って玄関の扉を開ければ、モニターに映っていた姿と変わらないさわやかな笑顔が待っていた。


「こちらに判子かサインを。」

「はーい。」

「この荷物、入りますかね?」