マネキン少年


あぁもうほんと、自分のこととなるとどうしてうまくいかないんだろう。

いや別に、勘違いなんてしてない。
ただ、私もみんなみたいに男の子と、それもできたらイケメンと二人でご飯にいったりしてみたいなぁって思っただけ。
好きだったとか、そういうわけではない、もちろん。
でも、なんていうのかな。少し、期待はずれだななんてそれぐらい思うだけなら許されるでしょ。

高校を卒業してからすぐに働き始めた、と言ってもただのフリーター。
進学するほどの頭脳もお金もなかった。でも、就職する勇気もなかった。
その末がフリーター。

みんなが大学生とか専門学生してるのが羨ましくないと言ったら嘘になる。
いや、それどころか羨ましい。うん、すごく羨ましい。
サークル活動とか飲み会とか、毎日着る服に悩むってことでさえも羨ましい。


「あ、かわいい。」


帰り道にふらりと寄ったパルコにはもう新しい季節の服が並び始めていた。
今年はやりの形の春物のコート。ほしいなぁって値段を見てみれば、うん、こんなの買ったら今月の家賃払えなくなっちゃう。