マネキン少年



さっき、目の前で見つめていた手のひらが私に向かって床から浮かび上がる。
まさか叩かれる?と反射で目をとじた私の頬にひんやりとした感覚が触れた。


「つめたい…」

「マネキン、だから。」


骨ばった手のひらには薄く血管が浮かび上がっている、みたいに見える。
でもその血管が、脈打っていないように見えるのは、マネキンだからなんて言われてしまったから?そんな、信じられるはずもない言葉をまともに受け取ってしまうのは、彼の手があまりにも冷たすぎるせい?


「信じられないの?」

「えっと、その、それはもちろん、その。」


不思議な、深いその瞳を見てしまえば、その言葉を信じるしか思いつかなくなってしまうのはどうしてなんだろう。


「じゃあこれで、どう?」


驚きで力の抜けた私の手のひらを持ち上げて、自分の胸元に導く。
本当ならかすかな心臓の鼓動が聞こえてくるはずのその場所。

それは、私の手を握る、その手のひらと同じくらい静かで、冷たいままだった。