マネキン少年



「このブラウス、まぁまぁ悪くないね。」

「はあ!?」


突然ブラウスの批評をされて思わず大きな声を出してしまう。
さっきまでの混乱よりも何よりも思わず怒りがわいてきてしまう。
突然現れた意味の分からない男に突然、昨日買ったばかりでそこそこ気に入っているブラウスに難癖つけられたら思わず怒りも湧いてくるってものだ。


「ご、ごめん。菜々香には似合うと思う。」

「あ、ごめん…怒ってるわけじゃない。」


怒られた子猫か何かみたいにびくつくものだから、思わず謝り返してしまう。

襟足付近が跳ねた黒い髪は、ワックスなんてついている様子もなく、おもむくままにさらり、と流れている。
黒い髪が触れる、陶器みたいな肌は透明に透き通っているみたいだ。そう、まるでさっき見た…


「マネキンみたいに。」

「マネキンだから。」

「え?」

「マネキンなんだ。」