「ねぇ、目、覚めてんの?」
「え?」
再び聞こえてきたその声で、半分寝ぼけていた目がはっきりと覚める。
おかしい、なんで、どうして、私の隣から声がするの。
カーペットに寝転んだ私の目の前に置かれた手のひら。その手のひらをたどれば、私が買ったブラウスが私の視界を彩っていく。
「あなた、誰!?」
完全に覚醒した意識はこれが異常事態だって事に気づく。
私の、前に、私の、部屋に、知らない男がいる。
変態か泥棒か?変態にしては顔立ちが整いすぎじゃないかとかそんなことはどうでもいいんだけど。
「なんで、私の、私の女物のブラウス着てるの!」
「それは菜々香が着せてくれたから。」
「着せたわけ、ないでしょぉ!」
思わず声が裏返ってしまう。普段ないでしょぉなんて言う事ないのに、かなり混乱してる。
腰が抜けたのか、じりじりと後ずさるみたいに動くことしかできないのに、彼もはいはいみたいな状態で近づいてくるものだからはたから見たらかなりシュールな光景なんだろう。

