マネキン少年



「ねぇ、起きてよ。」

「うぅーん…」


誰かに起こしてもらうのなんていつぶりだっけ…中学に入ってから自分で起き始めたから小学生以来…?
いやでも寝坊した時とか時々起こしてもらってたから、なんてそんなことはどうでもいいかな。

それにしても身体が痛い、私の布団ってこんなに固かったっけ…やわらかい素材を選んだはずなんだけど。
いや、違う。カーペットで寝ちゃったんだっけ私。そう、カーペット、一人暮らしの家のカーペット、ひとりぐらしの。

…一人暮らしの?


「だれ!?」


慌てて飛び起きたら身体がピキッと鳴った。カーペットとはいえ床だから寝心地最悪で身体が痛い。
なんて事より気にしなくちゃいけないのはさっき私を起こした声の主。


「おはよ。」


ついさっき眠る前に見たばかりの袖口に縫い付けられたパールのボタン。
その袖口からのびるのは、ところどころ骨ばった手のひらに、ほっそりとしたすらり長い指。
手の甲にうっすら浮かび上がった血管がいやに魅力的で思わず手を伸ばす。