仕方がないのでオレは自転車の元へ戻り、開いたままのカギに手をかけた。

カギをかけ忘れたのは事実だ。


「なんで朝一でお前の顔見なきゃなんねーのよ」


ため息混じりに言ったオレに、すぐさま剛が反応した。


「あたしだって、朝一はイケメンのお顔を拝みたいっつーの」


「それ遠回しにブサイクって言ってんの?」


「そうは言ってませんけど?」


言い合いをしつつも、手早くほぼ同時に支度を終えたオレと剛。

クラスが同じなので、当然向かう校舎も同じわけで。


「ついてくんなチビすけっ」


「うるさいデカ女、通行の邪魔っ」


不本意ながら、“仲良く”一緒に教室に入ることとなった。







バレーの会場は、外だ。

あんなに広い体育館があるにもかかわらず、だ。


行事は出来るだけ運動場を使え、というのがうちの高校の方針らしい。


男女バレー部員総出で行ったネット張りは比較的早く終わったので、

他の部活や生徒会の準備の手伝いに回されることになった。


「最近どうよ」


来賓用のテントを組み立てる作業に加わったオレの横で、暇そうに胡坐(あぐら)をかいた圭が言った。


「なにが? つーかお前手伝えよ」


「だって人足りてるじゃん」


圭はそう言って、ふぁあ、と欠伸(あくび)をかみ殺し、それからニヤッと意地悪く笑った。