小さなキミと






オレたちがそこに到着した時、とっくに日は暮れて辺りはだいぶ薄暗くなっていた。


「これが、剛の……家?」


呆気に取られ、オレは思わず立ち尽くす。


光が漏れだす入り口には暖簾(のれん)が掛けられ、その脇にはビールの垂れ幕と赤い提灯(ちょうちん)が出迎えている。


赤提灯に書かれた字からも分かるが、目の前の建物はどこからどう見ても『居酒屋』だった。


「へへ、ビックリした?」


「当たり前だろ……」


その時ガラッと引き戸が開いた。


焼き物や揚げ物のおいしそうな匂いと一緒に外に出て来たのは、

「あら、おかえり涼香」

全身が黒で統一された、いわゆる居酒屋ユニフォームを身にまとった女性だった。


「げっ」という声が隣で聞こえた。


この人が剛の母さんか……あんまり似てないな。

背だって剛よりもだいぶ低い。

と言ってもオレよりは……高そうだ。


そんな事を思っていた時、彼女とバチンと目が合った。


オレの事を上から下まで眺め回したかと思えば、ニヤリと笑みを浮かべた剛の母。


────あ。笑った顔が少し似て……


「彼氏?」


「……月曜までに提出しなきゃならない課題があるから、悪いけど今日店手伝えない」


剛は母の質問には答えなかった。


「服部、自転車こっち」


剛は、母が顔を出した居酒屋の入り口前をスタスタと通り過ぎて行った。


が、いつの間にやらオレの自転車は剛の母に掴まれ動くに動けない状況に。


「ハトリくん。キミ、涼香の彼氏なんでしょう」


────ハトリじゃなくて、ハットリです……。