小さなキミと

「そんじゃ、どっちもどっちって事でいい?」


服部の申し出というか提案に、一も二もなく頷いた。


この後八重歯が拝めれば、いつもみたく仲直りってことになるんじゃないかと期待を込めた頷きだった。


ところが服部は、予想の斜め上を行った。


今までのしかめっ面とは打って変わって、今度はどこか辛そうな表情になったのだ。


えーっ! 何で何で、どういうこと。


あたしには、その表情の理由が分からない。


「……オレさ、こういうガキっぽいところあるし、意地っ張りだし、
ビビりだし部屋きたねぇし色々面倒くさいヤツなんだよ」


はいーーーー?


いきなり自虐? どうした服部、熱でも出たか。


頭の中は大騒ぎ、そして相変わらずツッコミがワンパターンのあたしをよそに、服部の話は意外な方向へ進んだ。


「女子の気持ちとか、多分普通の男より全然分かんないと思う。
オレ小さい頃に親が離婚してて、ずっと男所帯だから余計」


気のせいでなければ、服部の声はわずかに震えていた。


話題が話題なだけに、下手な合いの手は入れられない。


当然これは初耳で、露骨な驚きを顔に出さないように必死で平静を保った。


何でそんな、プライベートでデリケートなことをあたしに言うんだろう。


しかもこんな、世界一くだらない追いかけっこの後に。


疑問も浮かぶが、今がそれを聞くタイミングじゃないということは何となく分かった。


「中学んとき知り合った、田辺(たなべ)ってヤツがいて。オレ、そいつと親友だったんだ」


中学……?

この流れで、いきなり親友の話?


っていうかこの状況、一体全体どういう風の吹き回しなんだろ。


大混乱のあたしをよそに、話がこれまた思いがけない方向へ飛んだのだった。