追試の会場は、1階の選択B教室。


学年合わせて20人ほどの生徒が集まった。


試験時間は30分で、テストの内容は期末よりも易しい問題に変わっていた。


残念ながら、それでも厳しかったヤツがいたようだけど。




用紙を回収した先生が出て行くなり、教室は一気に騒がしくなった。


やはりこういう時、異常に急ぐヤツと、のんびりするヤツとに分かれる現象はお決まりだ。


「くっそー、全然ダメだったぁ」


前の席で、剛が悔しそうに嘆く。


どう見てもコイツはのんびり、いやむしろノロマだった。


早いヤツはもう教室に居ない。


直前まで教科書類を見せる関係上、オレたちは自然と前後の席を確保することになったのだった。


「当たり前だろ、30分しか勉強してねんだから」


カバンに筆記用具をしまいつつ、憎まれ口を叩きつつ、オレは人知れず緊張していた。


ついさっきの出来事が、実は自分的にかなりこたえたのだ。


吉岡たちのくだらない揶揄(やゆ)はともかく、剛が八神を頼ったことに。


たかが名前呼び(オレにとっては“たかが”じゃないけど)でここまで噂されるコイツらには驚きだが、

妙に納得できてしまうところがあるのは事実だった。


剛が頑なに否定しているから、今はそういう関係ではないんだろうけど……


ケリをつけるなら早い方がいいに決まっている。


悠長にしていたら、それこそ噂通りになってしまう。



手遅れになる前に行動起こせよ?


いつかの圭の忠告が頭をよぎる。



あぁもう分かってんだようるさいなぁ!


この1週間で充分分かったから、もう分かんないふりすんの止めたから!


いろいろと吹っ切ったから、無理やり!


覚悟決めたっつーか決めざるを得ねーじゃん、こんなんさぁ!