文化委員の渡辺(わたなべ)さんいわく、


「王子と白雪姫が大きい方が、小人の小人感が割り増しになるでしょ?」だそうだ。


「絶対イヤです、あたしが白雪姫とか無理があるでしょ」


何度断っても、文化委員にしつこいくらいに食い下がられた。


HRの時間が押していたせいで、さっさと決めて帰宅したいクラスメイトたちまでもが、みんなあたしの敵になった。


ここまでくると、折れないワケにはいかなかった。


そしてまたしても有が絡んでくることになる。


あたしが姫に選ばれた理由は、女子で1番の長身だから。


この理屈で言うと、必然的に王子は有である。


最悪。その一言に尽きる。







ここのところ、例年の数倍は凄まじいであろう猛暑の日々が続いている。


しかしながら、さすが私立と言うべきか。


全教室から廊下に至るまで、余すところなくクーラーの冷気が行き届いている若葉南高校に、暑さでダレる心配は無用だった(ただし体育を除く)。


本日は7月14日。週の頭、月曜日である。


若南の全校生徒たちは、今日という日をずっと待ち望んでいた。


来たる夏休みはもう目前、そして今日から午前授業の日々が始まる────


「えーーーーッ
他の学校はもう夏休みなのぉーーーー?」


あたしの悲痛な叫びは、誰かさんの集中力をぶった切ってしまったようだ。


そのことを知ったのは、あたしの脳天に火花が散った後だった。


ジンジン痛む後頭部を押さえ振り向くと、怒りの形相で目を燃やす服部がいた。