ちょっと待って、さっきから日向は一体誰のハナシをしてるの?


服部が? モテてるって?


「口、開いてる。涼香、驚きすぎだよ。あたしでも、それ聞いたことあるし」


結に言われて、慌てて口を閉じる。

相当驚いた顔を表に出してしまっていたらしい。


っていうか、あたしはそんなの聞いたことありませんけど!?


「このまま何にもしないでだらだら過ごしてたら、服部くん、どっかの女に食われるぞ? それでいいの?」


食われる……って、日向。

綺麗な顔してえげつないこと言うなよ。


「でもさー。服部くん、涼香だけは、接し方普通だよね。
あたしなんかさぁ、喋るとき服部くん、未だにちょっと身構えてるもんね」


「そーそー。涼香と喋ってるとよく笑うよ、服部くん」


「絶対、他の女子とは違うって思ってるはずだよね」



いつの間にか、2人は言いたい放題にあたしの話をして、勝手に盛り上がっていた。

少し前まで、日向の話をしていたはずなのに。


服部のことは……


そりゃあたしだって、全部自分の都合のいいように解釈したいけどさ。


でも……。


日向の言うことも一理ある、かも。

確かに努力をしてみて損はない、と思ったりしなくもない、かも。

どっかの女に食われるぐらいなら……


「そうだね……あたしちょっと、頑張ってみる」


ギュッと拳(こぶし)を握りしめて、目の前の2人を見据えた。


その瞬間パッと明るくなった、2人の笑顔がやけにまぶしかった。



頑張ってみる、と口に出しただけで、ものすごく清々しい気持ちになった。


「おう、頑張れ」


「頑張ろうね、涼香」


そんな2人の声は、どこか嬉しそうで、弾んでいるように聞こえた。