夏のビックイベント。それは花火大会。あたしの街では毎年夏休みの半ばに行われる。近所の小さな神社にはお祭りの屋台が所狭しと並んでいて、今年こそは好きな男の子と浴衣を着て、綿飴を食べて金魚掬いをして、綺麗な花火を見たい。そしてその願いは、本日儚くも花火と共に散りゆく予定だ。






‐act.13‐





「はい、いいわよ」


ぎゅっと締められた浴衣の帯のせいか、はたまた花火大会に女友達と行くせいなのか、少し胸が痛くなった。

去年新しく買ってもらった薄黄色で向日葵が咲くその浴衣。髪もアップにして、黄色の花をちょこんと付けた。

精一杯お洒落したって、所詮女友達。本当に申し訳ないが、所詮女友達。


はあ…とため息を付いて居間に行くと、さっきまであった亮助の姿が見えない事に気付いた。



「あれ、亮助は?」



ちゃぶ台に肘を付いて呑気にせんべいをかじるお姉に聞く。



「さっき出てったわよ。彼女とでも祭りに行ったんじゃない?」

「は、アイツに彼女?」

「いないわけないじゃん、亮助くんかっこいいし、性格も花丸だし。」



さすが姉妹。奴の本性を知る前のあたしと同じ事を言うとは。

だけど、あいつに彼女がいるなんてありえない…と、思う?


何故か疑問なるその言葉。だってやっぱり亮助は、幸姉が言うようにモテるし。本性を知ってるあたしだって亮助の事嫌いじゃない。


…もしかして、本当に彼女と行ったのかな。




「幸姉、彼氏と花火行かないの?」

「てか、別れたし。」

「はぁっ!?」




そんな事を目線はテレビでせんべいをかじりながら言う姉。まるで“今日バイト休み”的なノリで。

2年も付き合って、別れて。恋って…そんなもんなの?

軽くカルチャーショックを受けていると、居間の時計が音を立てた。

はっとして振り返ると、針は6時丁度。待ち合わせも6時。

し…しまった!遅刻ーっ!