「ゆーうーちゃんっ!」

ピンポンも押さず優大の部屋に上がり込む。それはもう小さい頃からの癖。

予想通り優大はギターを抱え楽譜を真剣に見てた。

「あ、鈴!なな!こっちと、こっちの音どっちがええ?」

幼馴染みという間柄の優大。ちっこくて、頭がよくて、音楽が好きで、優しくて、頼れる可愛い奴。


「あ、今日ね家族増えるんだよ。亮子ちゃんっていうの」

「りょうこちゃん?」


にっこり話して言うアタシに、優大は不思議そうな顔して首を傾げた。

そりゃそうだ。うちにホームステイなんて似合わなさすぎる。


「おとんの知り合いの娘さんでね、いい子だったら紹介してあげる!」


時計を見ながらそう言い終えると、立ち上がって扉に向かう。


「もう帰んの?どこ行くん?」

「合コンでいい人見付けてくるー!だから優大の家にいるって事にしといてね!」

家から飛び出るともう夏の風があたしの髪に触れる。


この夏こそは!と、もう一度拳を握って見上げた空はきらきらと綺麗だった。