ご主人様を愛しているから。
ご主人様のペット、玩具でもよかった。
傍にいることができるなら、どんな扱いを受けてもいいと思っていた。
だけど、それだけでは満足できなくなるほど、一葉自身気付かぬうちに愛し過ぎていた。
ご主人様の全てが欲しくなった。
一葉以外の者に触れるのが耐えられなくなっていた。
この脱走は一種、賭けだった。
ご主人様が一葉の脱走に気付き自分を探しに来てくれるかどうか。
本当に1番のお気に入りなのかどうか、ご主人様の一葉に対する本心を知るために。
ご主人様自身が探しに来てくれない場合、一葉は死んでもいいと思っていた。
自分はご主人様にとってただのペットでしかないのなら生きていても仕方がない。
でもご主人様は自分を探しに来てくれた。
もうどんな罰を受けてもいいと思った。
自分はご主人様に愛されている、それがわかっただけでもう充分だった。
一葉は瞳を閉じた。
ご主人様の次の言葉を待つために。
どんな罰が待っているのか一葉には想像がつかない。
ただ、ご主人様の言葉が全てだった。
ご主人様の命ならばどんな罰でも受け入れる。
そう一葉が意を決した時、唇に何かが触れた。


