「あ、いいよ、行って来て」

「え〜…」

鳴海は何とも言えない声を出すと、改めてウエディングドレスの美女…九条 綾子を見た。

「…今、ここで答えないとダメですか?綾子さん」

「あったり前でしょう?!何のために、これ着てると思ってんのよ…で、どっちなの?!私と結婚するの?しないの?!」

綾子はつかんでいた鳴海のむなぐらを放すと、たずねた。

「えーっと…」

鳴海は一つ天井を見上げて周りを見渡すと、午後の一時を過ごすために来ていた、喫茶店の常連客が固唾を飲んで見守っている事に気づいた。

「自分は綾子さんと結婚しま…」

とまで言いかけて、鳴海は言葉を止めると苦笑して…

「すみません、綾子さん…結婚は出来ません」

と言って頭を深く下げた。

「…そう…やっぱり女がいたのね…あなたが、そう?!」

「え?」

綾子にキッとにらまれた千歳は、激しく首を横にふると否定した。

「ね〜ちゃん、その子はこの店のマスターだよぉ」

常連客の加藤が、見かねて口をはさんだ。