ドリブルする音が体育館に響く


キュキュッと靴が鳴る


瑞波は未だボールを触れていなかった


なんだよ
バスケなんか大嫌いだ
…できないから


いくら嫌でも授業だからやらないといけないからしょうがない


…サボると言われるからとりあえずボールを追いかけて走っていよう


「瑞波ァ!次ー!私と交換!」


佳奈が待ちきれないというように
ピョンピョン跳ねながら叫ぶ


相手チームよりこっちのチームが
人数が1人多いので交換制にすることになっている


「オッケ!あと頼むわ!」


「よっしゃ まかせろ!」


パチンとハイタッチをしてコートから出る


ここの体育館は2階にある


重い鉄の引戸は開けられていて
校庭からなにまでよく見渡せる


…あ、プールだ


高い壁に囲われているプールが目に入ってきた


下から見ようとしてもその壁の所為で
普段は見られない


覗き防止というところだろう


それが上からだとよく見える


最近水を張ったばかりのプール


太陽の光を反射してキラキラと光る


空の青に似合う
透き通った水の張られたプール


バスケのミニゲームなんかには
目もくれずに釘付けになった


五月の風が瑞波の頬を撫でる


ああ、マズイな


あまりの高揚に顔がにやける


「…どうすっかな…!」


どうする、とは
「変えるか変えないか」
で迷う どうする ではない


「変えるためにまず何をしようか」
の どうする だ


「とりあえず、最後はキチッとしないとだな」