天使が舞い降りるまで

私が黙ってしまうと、上杉さんは気を聞かせてくれたのか、話題を変えた


「そういえばさ、俺も『美帆』って呼びたいからさ、美帆も『賢人』って呼んでよ」


本当にこの人は、親近感を持たすのがうまい


ついさっき会ったばかりなのに、私はもうこの人に安心している


ほとんどお互いの素性を知らないらないままなのに


そんなことは気にせず話している


こんなことは初めてだった



「じゃぁ、『賢人』って呼ぶね!?」


私は男の人を名前で呼ぶのにためらいながらも、呼ぼうと決めた


というより、名前で呼びたかった


この人ともっと仲良くなりたかったから…


たとえ、それが今日1日だけの限られたものだとしても…


だから、近づけた気がして凄く嬉しかった


そして、日が落ちるまで、私たちは語り合った


家族のこと、友達のこと

学校のこと、昔のこと

何より、自分のこと


たくさん話した


賢人は意外とやんちゃな小学生だったこととか

2人の親友がいることとか