血の記憶





「あー!雨降ってきた」



自分の記憶の渦に飛び込もうとした私を香奈のそんな一言が引き留める。


窓の外に目をやるといつの間にか立ちこめていた雨雲から雫が落ちている。



「うわ、ほんとだ!俺帰るわ、翔真も元気そうだしな」


「あ、待って私も!」


「帰れ帰れ」



立ち上がった二人にしっしっと追い払う仕草をする翔真に、はぶてながら二人は帰っていった。


帰るタイミングを失った私と翔真の間に沈黙がのしかかる。



「じゃあ私も……」


「傘、ないんでしょ?今出たら濡れるよ」


この沈黙の中居るぐらいだったら濡れた方が何倍もマシなんだけど。



「あのさぁ……、奈央言ったよね?俺が泣かなくてもすむようにしてみせるって」


「……うん」


「俺学校休んでずっと考えていたんだ。俺の過去聞いてくれる?」



私の目を見て真っ直ぐに伝えた翔真の瞳は揺れていた。