血の記憶






信じない


俺はそんなの信じない。


目の前で崩れ落ちる菜央の体。


腹部から流れる赤い液体。


なんだっけ?


このドロドロしたやつ。



「え!?誰か警察っ!」


「おいっ、血が出てるぞ!救急車だ!」



そうだ、血だ。


………血?


でもなんで菜央から血がでてるんだ?


フラフラ歩いて菜央のところに行き、力が抜け膝から崩れる。


どうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうして――――。



「あーぁ、ヤっちゃった」



突如上から降ってきた声。


顔をあげると菜央を刺した男の姿。


男を目の前にしても怒りは湧いてこなかった。



「殺してくれ、俺も殺してくれよ……」



代わりに口からでた言葉はそれ。


怒りよりも絶望だった。