血の記憶





全てがスローに見える。


もどかしいもどかしいもどかしい!


なんでこんなに足が動かないんだ。


一歩でも早く菜央の近くに行かないといけないのに!


必死に走る俺を不思議に思ったのだろう。

首を傾げる菜央。



「っ菜央、後ろっ……!」



走りながら悲鳴の様な声で叫ぶ。


その声にやっと菜央が振り返る。


男の手元が太陽の光をうけて煌めいた。


やっと俺が感じた違和感の正体が分かった。




ナイフだ。




菜央まであと数歩。


男が俺を見てニヤっと笑ったのが見えた。

ナイフが菜央の体に沈みこんだ。