血の記憶





こいつと初めて話したのは中2の春。


桜の木の下で、だった。


あの日いつも遅刻ギリギリな俺が珍しく早起きして、学校に向かっていた。


いつも通りにグラウンドの横を通って、校舎へと向かう俺の視界に入ったのは


峯岸 菜央(みねぎし なお)


前友達が結構美人だ、と騒いでいたので名前だけは知っていた。


サラサラのロングヘアーを風に靡かせている彼女は俺に気づいてないようで、校門の脇に二本だけある桜の木の内の一本を見つめていた。


その様子はあまりにも綺麗で、桜よりも彼女に興味をもった。



「桜、好きなの?」



桜に向けている視線を俺に向けてほしい、その一心で声をかけた。


不意に桜からこっちを向いた瞳に心臓が高鳴るのが分かる。


一目惚れだったんだと思う。


彼女の純粋そうな瞳に。


白い肌に。


日に透けると茶色っぽくなる綺麗なストレートの髪の毛に。


その全てに一気に吸い込まれた。