6年前、中学1年の春、俺は恋をした。



相手は同じクラスで隣の席の佐伯(さえき)柚子。

入学式の日、俺は彼女に一目惚れした。

栗色の髪の毛に透き通るように白い肌、
バラの花をぱっと咲かせたように真っ赤な唇、
今にも折れそうな手足。もろ俺のタイプだった。

ラッキーな事に柚子は俺の隣の席で、
俺は柚子にしつこい位話しかけて、仲良しになった。
小学校の時の癖で友達を下の名前で呼んでいた名残りで、
いつのまにか柚子って呼ぶようになって、
それにつられてか、柚子は俺の事を旭君って呼ぶようになった。

案外、俺等(おれら)イイ感じ?って自惚れてたら、
親友の礼翔(れいと)から思いもよらぬ情報をGETした。

「なー旭?佐伯柚子って子が旭の事好きってウワサが流れてるぞ。」

「マジで?!礼翔それって本当っ?!」

「いや、だからウワサだって!ウ・ワ・サ!」例えウワサだとしても俺は嬉しい。

「あともう1つ…。その佐伯柚子って子、夏の初めに転校するらしいぞ。」

転…校?嘘だろ…嘘に決まってる!!

そんなの受け入れたくない…。

「まっこれもウワサだけどね~。」そうだウワサだ。悪いウワサなんだ。

俺はウワサと確信して、忘れる事にした。

そして時は過ぎ、嫌な予感のする初夏を迎えた。

俺の嫌な予感は的中した。柚子の転校…本当だった。

しかも場所は名古屋。もう、会えねーじゃん…。

こうなったら、柚子が引っ越す前に俺の気持ち、伝えよう!

あっ柚子だ…。何か俺に用かな?

「旭君、私名古屋に引っ越す事になったんだ。だからもう会えなくなっちゃうけど、これ
からも友達でいてね!バイバイ!」そう言って教室から出てった。

泣きそうな顔、してたじゃん…。

そんなんじゃ忘れられねーじゃん。バカ。

好きって言わせろよ…柚子。

俺は次の日の放課後、柚子の家へ行った。

ピンポーン返事なし。ピンポーン返事なし。

居留守か?んなわけねーよな。

「あら、佐伯さんなら今朝方8:00頃にもう越されたわよ?」

近所のおばさんが教えてくれた。

1歩…いや、100歩遅かった…。

柚子、好きだよ…。

この想いが名古屋まで届けば良いのにな…。

俺は現実逃避したくて耳にイヤホンを突っ込んだ。

イヤホンから流れてくる歌。俺のお気に入りの歌・・・。

これもう聞きたくなくなるな・・・。

「7月7日のMilky Way」…だっけ。

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暖かい日差しで目を覚ました2人
「いい天気だね」と笑った君が
たまらなく愛おしい
僕はずっとおもってた
「この幸せは永遠(とあ)」だと
ずっと信じてた矢先に
君は星座になったんだUh

好きだよ好きだよ好きだよ
伝え足りなかったこの想い
織姫様と彦星様
この想い届けて下さい・・・
遠く離れた君だけど
星ほど離れてないよね?

もしも願いが叶うとしたら
7月7日の夜にだけ
天(そら)から舞い降りてきてください
7月7日のMilky Way 
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せめて、さよならは言いたかったな…。

こんな中途半端な別れ方したら、

俺ずっと柚子の事忘れられねーよ…。

いつか、もう1度だけ会いたい・・・。