でも、私がさおりや光太が傍にいることで見えない一線を引いていても救われているように、坂下にもそうであってほしい。



『俺たちが好きでやっていることだから』



その優しさが、プレッシャーを緩和してくれていた。

さおりや光太に助けてほしいなんて望んではいなかったけど、握れる手の距離がわかっているだけでどれだけ心強かったか知れない。

甘えることを無条件に受け入れてくれる存在は、確かに生きる糧に私はなった。



坂下。

坂下に何があったのかはわからない。

どんな事情があるのかも知らない。


でも、すっぽりと開いている穴なら、別のもので埋められないかな。

私はそうしてもらったよ。

楽しく過ごすことで、穴があることを忘れることもあるよ。



「夕日、綺麗だったよね」



私はそう言って、精一杯の笑顔を向けた。