「あれがホントのイケメンくんだねー。彼、クラスでモテるでしょ」



後ろの車に乗った坂下を見ながら、車夫さんがイタズラっぽく笑った。



「モテ……はしないね」

「女子苦手って言ってたし」

「そうなの?結構慣れてると思ったけど」



私はまたさおりと顔を見合せ、もう一台の車の車夫さんと話している坂下を見たのだった。

確かにさらっとお金を出すところは嫌みなく自然で大人っぽかった。




「前の学校で彼女とかいたのかな」



さおりがぽつりと呟いた。



「女子が苦手って言ってたけど」

「すごい壮絶な修羅場があって、もうコリゴリみたいな?」

「えー??」

「それで居られなくなって転校してたりして」

「それくらいで転校までする?」

「うーん」



もしそうだとしても、それってどんな修羅場だろう。

冗談半分で想像して、笑ってしまった。



そういえば坂下って自分のことをあんまり話さないな。

それは暗に突っ込まれたくないということなんだろうけど。