運河沿いに、ハンドメイドアクセサリーや似顔絵のストリートアーティストがいて、それぞれの場所に修学旅行生が塊を作っていた。
「あ、人力車!」
さおりがまだ向こう側に見える橋の上を指差して声を上げた。
「ホントだー!」
さおりが小走りに橋を目指し、私と坂下もそれを追い掛ける。
ちょうど老夫婦のお客さんが戻ってきたばかりのようだった。
ここにも修学旅行生が人力車を囲んでいる。
「運転手さん、イケメン!」
さおりが拳を握り締めると、それに気付いた運転手さんがニコリと笑ってくれた。
「運転手じゃなくて、車夫(しゃふ)っていうんだよ」
「そうなんですかー!乗りたーい!いくらくらいになりますか?」
「ひとり二千円だよ」
その言葉に、私とさおりは顔を見合わせる。
思ったより高い。
お土産も沢山買ってしまったし。
さおりもそれは感じていたようだった。
「一台二人乗りだから、三人乗るなら二台でバラバラになっちゃうけど」
気遣うように車夫さんは教えてくれた。
「私は──、」
「じゃあ三人分で」
「毎度!」
私の後ろから、坂下が車夫さんに一万円札を差し出していた。
「俺はひとりでいいよ」