すると、坂下は手を伸ばして、沢山の置物の中のひとつを摘み上げた。
「これ、高槻っぽい」
そう言って掌を返すと、そこにはカメの硝子細工。
「ぷっ、」
何がと言われても困るけど、妙に納得してしまって思わず笑った。
私は坂下が選んだカメの置物を購入した。
坂下は何がハマったのか、カメのついたストラップを買っていた。
「それ、光太に?」
「うん。なんか似てるから」
そう言って、坂下は私とさおりにも小さい紙袋を差し出す。
開けてみると、私にはウシ、さおりにはネズミのストラップ。
「せっかく貰ったのになんか嬉しくないんですけど」
さおりは頬を膨らませると、坂下が笑った。
ストラップにもそれぞれの動物にも罪はないけど、確かに似てると言われればなんだか微妙だ。
「坂下はお土産とか買わないの?」
私たちにあげるもの以外、荷物があるようには見えない。
ふと疑問に思って言った。
「俺、お土産あげる人いないから」
そう、サラリと返す坂下。
「え、」
そういえば、坂下は一人暮らしだった。