「高槻と仁科は、なんで野上にあんなに過保護なんだ?」



動物園に行った日の夜。

坂下が光太に聞いた。

四人部屋の和室の一室。

あとの二人は別の部屋に行ってしまっていた。

朝まで帰って来ないかもしれないと容易に想像できるテンションで出ていった。



「ただ好きだからってだけじゃないよな」



そういうと、荷物の整理をしていた光太の手が止まる。



「だから、」



光太は小さく溜め息をつくと、坂下を見る。



「好きでやってるんだから、別にいいだろ」

「好きでやってるって、それ、本当に野上のためになると思ってんの?」

「……、」

「野上が危機感無さすぎなの、高槻のせいじゃないのか?」

「なんだよ、危機感って、」

「『メロウ』で大学生にナンパされたり、平気で俺んち上がり込んできたり」

「……ナンパってなんだよ」

「普通に遊びに連れて行かれそうだった」



光太は顔を上げて口を開いたが、そのまま何も言わずに視線を落とした。

眉間を寄せて、掴んでいるタオルを握り締める。

坂下はそんな光太の様子をしばらく見て、溜め息をついた。