「坂下、くん」



次の日のお昼休み、私は怪しむさおりと光太を振り切り、教室を出る坂下を追いかけた。

坂下が向かったのは人気のない屋上だった。

屋上って入れたんだ……。



私の声に特に驚くこともなく、持っていたパンの袋を開く。



「何?」

「あの、昨日のことだけど……」

「……、」



フェンスのところに座っていた坂下は、視線を上げて立っている私の顔を見上げる。

ちゃんと向き合って顔を見たのはこのときが初めてだった。

明るい色の天パの髪の奥に整った眉、その下につり上がった目。

少し冷たそうな印象で、一瞬ドキリとした。



「あのね、『メロウ』にもう来ないって、私のせいかな」

「え?」

「何か悪いことしたならちゃんと謝りたいって思って。声掛けたのがダメだったら、もう声掛けないよ。
私、昨日から働き始めたばかりで、なのに、私のせいでお客さんが一人減っちゃうのは、なんか申し訳ないし」

「別に……えーと、野上だっけ。あんたのせいじゃないよ」

「え、」



そう言って、坂下は溜め息を吐いてパンをかじる。



「……、」

「……、」

「あの、」

「だから、野上のせいじゃないから、気にしなくてもいいって。またお越しくださいって言ったから、もう来ないよって言っただけ」