また、空回っているんだろうか。
私だけ。
お父さんのときと同じように。
心臓が早鐘のように鳴っていた。
息が上手く吸い込めない。
『高槻が野上を傷付けるなんて有り得ないだろ』
そうだ。
光太はお父さんとは違う。
自惚れじゃなく、光太は、いつだって優しかった。
違う。
お父さんとは違う。
お父さんとは全然違う。
私は震える息をゆっくり、ゆっくり吸い込むと、拳に力を込めた。
反らされた顔をしっかりと見て、待つ。
『ごめん』の意味を。
受け止めないと。
光太を信じて。
「一子、」
「うん?」
なるべくいつも通り、私は首を傾けて明るく返す。
「……俺、」
光太は口を大きな手で覆った。
思い詰めた表情でまたしばらく黙ると、今度は溜め息を吐き出して私に向き直った。
視線が、ようやく合った。
でも、その視線はどこか熱を帯びたように潤んでいて、圧倒されるほど真剣だった。
「俺は、野上一子が、好きです」


