トン、と背中を押された。
「わ、」
スローモーションのように、前につんのめる。
視界に入った坂下の表情は、満面の笑みだった。
「一子、」
「あ、」
四つん這いの格好で光太と目が合った私は、どう見ても隠れて見ていた怪しい人物だった。
しばらくの沈黙の後、私は光太に覗いていたことを謝った。
様子が変で、気になっていたことも。
すると光太は申し訳なさそうに目を伏せ、溜め息のように息を漏らした。
その仕草一つ一つに、びくり、と反応する。
「ごめん」
落ち着かないようにそわそわと身体を揺らす。
「一子、」
顔を上げる。
光太の顔は、いつもと違って見えた。
「……、」
「……、」
光太の顔が歪む。
泣きそうな、顔。
「ごめん」
小さく、謝罪を繰り返す光太。
その表情が、すごく痛々しくて。
私はそっと光太の手に触れた。
ビクリ、と跳ねた光太の身体。
私は光太の顔を見上げる。
いつもと違う光太。
目を反らしたまま、光太は俯いていた。


