その時、温かいぬくもりが私の手から感じた。


涙でぼやける目をこすり、薄い視界から見えたのはサラだった。


サラは私の両手を優しく握っていた。


「贅沢なんかじゃない。」


サラが言った。


「……え?」


少しかすれた自分の声。


「贅沢なんかじゃないわ。


 自分の幸せを願って何が悪いの。


 不幸を願う人なんかいないじゃない。


 もちろん、幸せなことはあたりまえなんかじゃないわ。


 でもそれに気づけたアイはすごいじゃない。


 小さな幸せが大きな幸せであることに気づけたアイは、これからもっともっと幸せになれるはずよ。


 アイはきっと、「幸せ」という意味がなんなのか。


 「幸せ」って、どれだけすごいことなのか。


 過去のアイより何十倍も理解してる。


 支えがあるからこそ、みんな強くなれるの。


 ひとりだと心細いし、寂しいに決まってる。


 だから、贅沢なんかじゃないのよ。


 アイのお母さんは、きっと今もアイのことが大好きよ。


 自分の気持ちをちゃんと言わなきゃわからないことだってあるわ。


 自分から前に進もうとする「勇気」が必要なの。


 少しくらいわがままになったって、いいじゃない。」


サラの言葉は優しかった。


私が欲しかった言葉だったのかもしれない。


また、涙が溢れてきた。