キミが教えてくれたこと~迷い込んだ世界~




「わ、私なんかと友達になっても……楽しくなんかないのにっ……。」


私は、力を入れてそう言ってしまった。


だって、本当にそうだもん。


楽しくなんかない。


私なんかといたら、うざいだけ……。


どうせみんな、私なんかいらなくなる。


空気だって悪くなる。


つまんなくなっちゃう。


「消えたらいい」って、思うようになる……。


「アイ、苦しいこといっぱいあったんだね。」


「えっ。」


ナギは、悲しそうな顔をして私に言った。


下を向いていた私は、ナギを見た。


「いっぱい悩んだんだね。


いっぱい傷ついたんだね。


アイは悪くないのにねっ。


ナギ、アイのことすき。


アイは優しいよ。


人の痛みがわかる良い子だよ。


ナギはアイに、「消えてほしい」なんて思わないよ。


ナギ、アイともっともっとお話ししたいよ。


それにアイだって、そうでしょ?


アイは自分の気持ちを抑えてるだけだよ。


 本当の気持ちは、アイが一番知ってるよ。


 ナギ、アイの思ってることわかっちゃうんだからっ。」


 自分が一番……知っている?


 自分の気持ち……を。


 私の、気持ち……。


 だって、わからない。


 ずっと、我慢しなきゃいけなかったから。


 ひとりでなんでもしなきゃ、やっていけなかったから。


友達が欲しいなんて、贅沢だ。


ずっと友達がいたはずなのに、自分の周りに誰もいなくなってから、「友達がいるって奇跡なんだ」って思った。


自分のことを「友達」って思ってもらうことってすごく難しくて、信用できる人なんて当たり前のようにつくってたけど、そんなの簡単なことじゃないってこともわかった。


自分のことを理解してもらうのにはすごく時間がかかる。


出会ってすぐに相手のことを理解できる人なんて、そう簡単にいない。


だから、時間を重ねていかなくてはいけない。


そう思うと、自分にとって「友達が欲しい」「自分のことを理解してほしい」「家族に愛されたい」なんて、贅沢すぎる考えなんだって思った。


だから、何があっても我慢しなきゃいけないって思ったんだ。


贅沢なんて言っちゃだめだって。


自分一人でなんでもできなきゃいけないんだって。


そう、思ってたから……。


でも、いいの?


自分の気持ちを、言ってもいいの?


抑えなくてもいいの?


我慢……しなくてもいいの?


……わかってる。


そうだ。


自分が一番わかってる。


ずっとずっと、強い思いがある。


なのに、自分で自分を抑え込んでいた。


苦しかった。


本当は、わかってほしいんだ。


自分の気持ちを知ってほしい。


「私の……気持ちは……。」