次の日。
僕は、何事も無かったかのように学校へ出掛けた。

ジャックやベル、警察の人からは。
『まだ行かない方が良い』と言われたけれど、僕はなるべく学校は休みたくなかったのだ。



教室に入ると、みんな深刻そうな顔で僕を見てきた。

「ポート、大丈夫?」

「あんな事があった翌日に、学校へ来るなんて無茶だ。
精神がおかしくなるよ?」

ミリーもフユキも、僕を心配して話しかけてくれたけれど、僕にはまだ母さんが死んだ事がイマイチ掴めなかった。
実感が沸かないのだ、カレンダーを見たってエイプリルフールでも、なければ僕の誕生日でもない。
誰も、僕をからかってはいない。

実感が無いから、ベルのようにおかしくなれないのだろう。








「ミリー、フユキ。
僕は、おかしいのかな?」

ミリーとフユキは顔を見合わせた。
やっぱり、学校へ来ない方が良かったかもしれない。

「僕は、母さんが死んだのに悲しくないんだ。
僕は、おかしい?」

「何を言ってるのよ、ポート。
ずっと側に居たお母さんがいきなり居なくなったのよ。
誰だって、実感は沸かないと思うよ。」

「ポート、今日は帰りなよ。
学校に無理して来るなんて、君は疲れているんだ。
心身共に、疲れている。」

先生もその場に現れて、僕は結局帰ることになってしまった。帰りたくはなかったんだ。
帰ったって、母さんが死んだ事実を突きつけられるだけだ。だったら僕は、友達が居る学校に行って母さんが死んだ事実から目を逸らしたかった。

「母さん…」